「二度目の夏、二度と会えない君」発表当初から気になっていたタイトルだ。しかしなにかと理由を付けて読んでいなかった。その頃は小説を余り読まなくなっていた頃だった。しかし今回新装版が発売されるということでいいきっかけだと思い、購入し読むことにした。
![]() 二度めの夏、二度と会えない君 (小学館文庫) [ 赤城 大空 ] |
感想
プロローグ
二周目から始まり、そして死ぬということを最初に突きつけてくる。告白を無かった事にするという物語の目的を示してくる。
伝えてはいけない気持ち
一周目である。告白を無かったことにしなければならない理由を示してくる。
最初はそもそも燐とかかわらない予定だったのだが、余計に燐を傷つけてしまうということで、できるだけ歴史を変えないようにして、そして最後だけ告白しないという改変をする。基本、二週目は一周目をなぞるだけなのだ。タイムリープものといってイメージするのは何度も繰り返し行い、積極的に歴史を改変してくものだったので新鮮だった。
死ぬとわかっていると言葉にも重みが違うし、ゴミ処理場などでの向こうからの行動は嬉しいけど隠さないといけなくて、そしてその行動は辛くて、その葛藤が読んでてとても辛かった。
葬儀の場での「壊れてしまっても残るものはあるはずだ」それは燐が作った関係でバンドを続けてくれと言った燐が残したかったものだと思った。
好きという気持ち
どう考えても燐は智のことが好きだろうという状況が続く中、智は燐が死ぬ間際のことを思い出し、そんなことはないと自分に言い聞かせる。しかし合宿での会長との所を見るとやはり好きだよなと思った。そして智が遠くを見ているせいで関係がおかしくなってしまった。遠くを見ているというのは告白を無かった事にするという最終的な目的にしばられて二周目の燐を一周目と違う今の燐を見ていないということなのかなと思った。
本当にやるべきこと
智が告白されたのを見て、好きな人は燐以外に居ると言われて、おかしくなる燐。ここで好きなんだということが確実なものとなった、しかしそれではなぜ一周目で拒絶したのか。
お互いがお互いを想うがゆえにすれ違う。正しくこれなんだなと思った。確信したのはエピローグであった。"Animato animato"とは逆のことをした、引きずった原因の逆のことをした。でも結局引きずってしまった。だから時間が巻き戻った。だからやるべきは告白を無かった事にするということではなく、引きずらないこと。
「バンド、続けて。前を向いて頑張って。そうしてくれると、あたしは嬉しい」
これの問に続けると答えることだったのだと思った。
前を向いて欲しい、これが燐の最後のお願い。
君の居ない未来
何か言いかけた燐、好きと言いかけたのでしょうが言えなかった。代わりに約束のことを言う。そして死ぬ直前、同じ気持ちということを書き残す、死ぬ直前でやっぱり伝えたいとなったのだと思いました。一周目では引きずるからと拒絶した気持ち、しかし今回は約束のことがあるから大丈夫と気持ちを伝えることができたのだと思いました。
おわりに
前半は読んでて苦しくて苦しくて、後半はお互いがお互いを思うことでのすれ違いが辛くて涙してしまいました。作者の言うとおり感情優先で感情の描写が多く、その分本当に辛かった。燐に冷たくするところなんてキャラクターに感情移入して辛かった。
この作品に出会って良かった、心からそう思います。